「見せたいものがあるんだ」


藍染に言われたときから、嫌な予感はしていた。
隊士達と話す時とは、僅かばかりズレるトーン。東仙くらいしか気付けはしないだろうし、そうやって藍染から話し掛けられる者は、東仙しか、いなかった。
それは東仙にとって、喜びであり、哀しみである。


血溜まり。
特殊な結界で囲まれたそこに、二人いた。ついさっき一人になったようだが。
一人はよく知った霊圧だった。弱まっていくそれから、血液と共に流れて流れて。
横たわる“彼”を、貫いた霊圧の残滓は、東仙の前に立つ、小さな人物のものと同じだった。

「紹介しよう、市丸ギンだ」

返り血の付いた頬で、少年が音もなく嗤った。






よく知る男だった。
少々騒がしいが、おおらかで、真っすぐな気性で、隊に厚い忠義を持ち、部下の面倒をよく見た、東仙の上司だった男。
東仙の上司だったもう一人の男に、あっさりと殺された。
公式には『虚に襲われての殉職』という形にすると、藍染に説明された。遺体は秘密裏に処分。検死に回らないようにしなくてはね。藍染は続けた。

「さて、隊葬の支度をしなくてはならないな。要は来るかい?」
「いえ…近いうちに、遠方への出動がありますので」
「そうか。それならよく別れを告げておくといいよ」


遺体に二度と会わぬまま、東仙は任務へと発った。隊葬はその間に行われた。平子隊長が、五番隊隊士達が、どのような顔をして葬儀に出たかを、東仙は知らない。ただ自分は弱虫だと思った。



任務から帰還し、事務手続を終えて、隊舎を出る。日は落ち、足元は暗いが、東仙には関係が無い。
墓碑が立っていると聞いた。足早にそこへと向かう。
何の為に?何の


墓碑の前に誰かが屈み込んでいた。
今の上司だとわかって、足を止めた。