「東、仙…?」

衛島が声をかけると、東仙は静かに礼をした。




「帰って来たのか」
「はい、つい先程」
「……」
「……」
「…そういえばお前は、五番隊から来たんだったな」

口をあまり動かさずに、衛島が呟く。
はい、と東仙も小さく返事をして、またしばしの沈黙が流れた。


「…衛島三席も、ご交流があったのですね」
「まァな。横のつながりっつうか…それなりに仲良かったんだよコイツとは」
眉尻を下げて笑う。
「こんなことになっちまうなんてなぁ…。……まさか、とは言わないけど」

そう、まさか、ではない。
死神をやっている限りいつだって起こりうることではある。

「それだって…五番隊は大変だったんじゃないでしょうか」
「だろうな。上席が消えると、下がみんな動揺するから…」
「隊葬には出られましたか」
「あぁ、出たよ。うちだったらどうなんだろうって……ずっと考えてた。平子隊長がずっと怒ったような顔しててなぁ。うちの隊長は平子隊長と違って、もっとわかりやすく怒るだろうから、残った奴らは堪ったもんじゃねぇな」
冗談めかして言って、乾いた笑い声を出す。
「…副隊長の藍染さんが、よくまとめていたよ。ありゃうちの副隊長には、無理だろうな」
無理なのではない、その役割でないだけだ。と、東仙は思った。そして衛島自身も、そんなことは求めていないのが、よくわかる。





嗚呼、息苦しいな。
鼻の奥に違和感を感じる。
東仙の変調を知ってか知らずか、衛島が続ける。


「コイツ、隊ではどんなだった?」
「慕われてました。藍染副隊長とはまた違った雰囲気の方で。豪胆で裏表がないと言うか」
「豪胆、ねぇ…。書類を書き損じて何度泣きつかれたか」
「そんな人だったんですか」
東仙が驚いたように言ったので、衛島は今度こそ柔らかく笑った。
「あと、大トラだったな」
「………」




再び、沈黙が流れる。
東仙の眉間の皺が、衛島は気になったが、本人は気付いていないようだった。
ひどく痛ましい顔をしているが、どこか遠くを見ているようにも思える。
東仙は知っていた。彼の最期を。衛島は知らない。東仙が記憶している、彼の血のぬめりも、これから先、切り捨てていかなくてはならないモノも。





鼻の奥に血の臭いが蘇って、咽せ込む。

咳込む東仙を見て、悲しいなら泣けばいいのに、と、衛島は思った。




『なにもなにもできない』


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