TELEPHONE#IAH


カチカチカチ、
とホーマーがすこぶる不満そうな顔で弄っているのは、本人の携帯ではなくて、購入されてまだ数週間しか経ってない、白いやつ。真新しい。機能は近頃のにしては物足りないけど。

「いいの?勝手に見て」
それパンサーのでしょう?と僕が言うと、目だけ動かして意図的にシカトされた。顔が更に不満げになる。
携帯の持ち主は、現在喜々としてグラウンドの片付け中。他の当番と一緒に。(ここ大事。物凄く大事ね)



お金は何とかめどがついたらしい。というか、なきゃ困る、と色んな方面からせっつかれて、どうにか工面したみたい。
もちろん、見立ては僕がやった。パンサーは店先に並ぶ携帯を、玩具のように楽しげに見ていたけど、どれを買うかはほとんど初めっから僕に任せるつもりだったらしい。嬉しいね、頼られるっていうのは。色も僕が選んだ。「白なんて女みてーだろ」ってホーマーは批判したけれど、いやここは絶対に白だよ。



ホーマーの親指によって、スクロールしていく画面を、後ろから覗き込む。
アドレス帳。プライバシーの侵害だなぁと思いながら眺める綴りは、結構、見覚えがあって。知り合いじゃないけど。

「畜生、」
ホーマーが小声で呟いたのは、州選抜のHCのところ。あぁたった今、選抜でMVPを取った、WRの名前が流れていったよ。
「…なかなか豪華なアドレス帳だね」
「て言うかよ、ワット」
ホーマーが指を止めた。

「なんで俺達登録されてねぇの?」



「あぁ?入ってない?」
「赤外線で送っとけよ…!買ったらすぐに…!!」
「うん、でもね」



「みんな覚えてるから良いって」
















「おい!お前等ちょっとこっち寄れ!!」
ホーマーがすばやくアドレス帳を閉じた。今現在、ロッカールームに居る仲間達全員に呼び掛けて、背後に集まらせる。
なんだなんだ、と寄る面々。
ある程度近づいたところで、


パシャ






素早く保存。待ち受けに登録。
パタンと携帯を閉じて、乱雑に机の上に戻した。
全くズルイなぁ。自分だけピースしちゃって。

「よし。散った散った」
満足げにホーマーが言った。