あ、これって

頭ん中カッカ燃えているはずなのに、まるで背後からそれを眺めているかのような俺の一部が呟いた。
怒ってもしょうがないのに腹を立てずにはいられない。パンサーに傷をつける連中にも、それでヘラヘラしてられるパンサーにも、そして何より腹ばっか立てるくせに何もできやしない俺自身にも。
咄嗟に掴んだ手首は、俺の手にガッチリと固定されて、パンサーは磔のごとくロッカーを背にしている。そもそも感情のコントロールなんて大して上手くできない。燃えたぎる気分に任せて、憎き傷を観察すべく、顔を近づけた。

と、ここでだ。
ほんの、ほんの僅かに残っていた客観視が呟いた。
あ、これって



パンサーの身体は微かに震えている。
恐怖、だろうか?と思いつつ、俺の体は不謹慎にざわめく。これってよ、 顔を近づけるとパンサーの腕がもがいたので、今一度力を込めて拘束する。ああこれって

そっと首を捻ると、パンサーと目があった。
同じことを考えていたかはわからない。
けれど震える体に伝わる体温、懇願するように潤んだ眼。俺のさほどない理性を陥落させるには、全く持って十分過ぎた。


切り傷に舌を這わす。
パンサーの体がびくりと跳ねたのを押さえつけるため、腕に一層の力を込めた。
傷は血こそ止まっているものの、まだ乾ききってない。鉄の味がする。
一度口を離すと、パンサーの呼吸が荒くなっていることに気付く。あともう一つ。胸のふたつの突起が、ぷっくりと勃ちあがっていることにも。

きっと同じことを考えていた。
それが免罪符のように俺の悪事を助長させる。
胸に吸いついた。
勃ちあがっているところを、舌の先で刺激する。
足に力が入らないのか、下へと落ちてゆくパンサーの体を支えるために、股の間に膝を入れた。
当たっている、のがわかる。お互いに。


口を胸から放して、パンサーの口に付ける。膝は刺激するように少し動かして。
んぅ…、とパンサーの口から声が漏れる。身を少し捩らせたが、抵抗なのか快楽なのかはわからない。ただ股のモノは確実に硬度を増している。(もちろん俺のもだ。)
手を離して下を脱がせたい。
パンサーの歯を舌でなぞりながら思ったけれど、できねぇ。
……手を離したら、口実が無くなる。
この期に及んでもまだビビってる自分に、いっそ失笑できそうだ。でもできねぇ。
卑怯なんて百も承知で、こーゆーことしたいって思ってる奴に餌ぶらさげんなバカ。

唇を離す。
と同時に手を放す。膝も抜いた。
パンサーはロッカーに沿って、ずるずると座り込んだ。
口の端から垂れる涎を、手の甲で拭きながら言う。
「……気をつけろ。今日は先帰る」


直行したのはもちろんトイレで。
きっとパンサーも同じことしてる、と考えたら、また興奮した。