20    ※注:同じ世界線ではない


(20.ホマパン)

『お誕生日おめでとうございまーす!』

オフになった選手を直撃!のレポーターの陽気な言祝ぎに、マイクを向けられた選手は目を丸くした。
『え?今日17日ッスよね??』
『カメラの前でそーいうこと言わねえの!まったくお前は!』
隣のチームメイトに頭をぐりぐり撫でられての、困り顔。


「これ放映が今だからってことだったんだなあ」
「いやそこわかっとけよお前」
まあまだ19日だけど。
夜半のスポーツニュース、ホーマーの隣には、テレビの中と同じ顔、パトリック・スペンサーが並んでいる。
『番組からのお祝いです!』で渡された、巨大な豹のぬいぐるみは部屋の隅に鎮座していた。



『一つ大人になるに向けて抱負はありますか?』
『えー、と、色んな人に助けてもらっちゃってるので、ちょびっとは助ける側になりたい、です』


「ヒュー!優等生!」
「やめてって恥ずかしい!」
「何立派なこと言ってんだよ」
「いいじゃんか…」
「色んな人って例えば誰だよ」
「ホーマー…分かってて言ってるっしょ?」


パンサーが少しだけ目を伏せて、声量を落として言う。
へえ、珍し。照れてやがる。
「さあ、誰なんだろ?」
ホーマーが茶化すと、パンサーは、浅く眉間に皺を寄せる。楽しそうなホーマーを睨みながら、恥ずかしさを押さえつけるために、ぐくっと鼻から深く呼吸しようとし、
ぐるり、
視界が回った。



「あんま寂しいこと言うんじゃねえよ。世話くらいさせろ」



テレビから日付をまたぐ時報。



「ん、今年もひとつ年取ったパンサー、一番乗りで見れた」
部屋明かりに背を向け、顔を影にしながら、実に満足そうにホーマーが言う。
パンサーは丸くした目を一度目蓋で覆ってから、観念したようにひと息ついた。
顔を見れて満足したらしいホーマーが、今度は首筋に口唇を寄せてくるので、近付く耳元に向かって、パンサーは呟く。


ホーマー、俺、ホーマーの為になること、ほとんどできねえけど、でも、おかげでちゃんと出来てるところ、ちゃんと、見せるから。


口唇の接近が一瞬止まった。
返事の代わりに深く深く首筋を吸われて、パンサーは小さく呻いた。



















































(20.クリパン)

「やっと散ったか」

夜11時を回って、ようやく対面できた恋人に、クリフォードが憎々しげに言う。
今日一日だいたい不機嫌だった。
誕生日だろうとクリスマスだろうと、ただでさえペタペタ触りやすいパンサーに追加して触って良い口実が発生する日は嫌いだ。
そういう日パンサーは、クリフォードとはおおよそ一番最後に顔を合わせることになる。

恋人なら真っ先に顔見たいって思うもんじゃねーの!?
目一杯祝いたいってもんじゃねーの!?
とバッドに言われ
(空かさず脛をガチッと蹴った)

また別の時にはドンに
十把一絡げにされては哀しいものなあ〜
と言われたが
(足を踏みつけようとしたがさり気なくかわされた)

賑やかに祝うのも、一緒に騒がしい中に放り込まれるのも、性分じゃない。
一方でパンサーのほうも、意外にもそれで寂しがるような素振りは見せなかった。
他にいくらでも現れる自身の誕生を祝う相手に、感謝を述べたり愛情を表現するのに忙しいらしい。

近しい人間に《付き合っている》と認識されてからしばらく経つが、その割には淡白な関係にしばしば驚かれる。
指摘するとクリフォードは
(チッ、うっせーな。俺とアイツの関係に口出してくんじゃねーよ)
と眼光を飛ばし、
パンサーは
「うんでもクリフォードはそういうタイプだし」
と笑うだけだ。
全く異なるように見える二人だが、妙に釣り合いはとれているようだった。



不機嫌そうなクリフォードの顔を見て、パンサーは相変わらずの笑みを零した。
祝い事の最後に、そのつまらなそうな表情を見ると何故だか安心するようになったのは、いつからだったろう。

「アハハ、お待たせ」
「今日一日さんっざん愛想売ってきたって感じだな」
「にしししし…大繁盛ってことで」
浮かれるパンサーをクリフォードは鼻からのため息で一蹴した後、

「一番良いの」
「え?」
「一番高価で上等なのは、ちゃんと取ってあるんだろうな」
「そりゃあ、…うん」
パンサーの笑みが引っ込んだのを見て、今度はクリフォードが少しだけ口角を上げた。


「じゃあ、それを貰おうか」
スルリと指を絡ませてその手を引くと、パンサーは神妙な顔をして、健気に付いて来る。

さて天から良きものが授けられためでたき日もあと数分。
その恩恵に、お前らもう十分触れることが出来ただろう。

ここからは先は俺のもの。