王族趣味



気に入ったか気に入らないかで言ったら、気に入った。
プライドが高いのは悪くないが、ただ威嚇したいだけの奴は駄目だ。無駄に突っかかってくるのも良くない。友好的なのは構わないが馴れ馴れしいのは御免だ。謙虚と卑屈、高潔と傲慢を取り違えてる?話にならない。

絶妙だと思った。
その特異性を、注意深くしていないと見落として(『お前はそういう奴だから』で済まして)しまいそうになるところが特に。



「王族趣味だな」
「あぁ?」
「猛獣を従えてるではないか」

口角を上げて言うドンにクリフォードは内心舌打ちをする。最近になって知ったのだが、どうやらドンはパンサーの事を、今シーズンに入る前から知っていたらしい。
選抜に選ばれてから対面し(もちろん名前と記録は、直接出会うよりも早く、今シーズンからは知っている)『思ってたよりもだいぶ使えそうで良い』などと口にしてしまったことが悔やまれる。

「ハ、随分人に馴れた猛獣も居たもんだ」
「幼少の頃より馴らされた獣はああだ」
「まるで見たことあるような口振りだな」
クリフォードの指摘に、ドンは薄く笑って肩をすくめた。
見たことあるんだなつまり。

「どこが気に入ったのかね」
「そうだな、育った環境は貧しいが、振る舞いは下品じゃない」
「ほう。確かに、気品がある、というのは大事な条件だ」

ハッキリ言って、クリフォードとドンは、いつも意見が合うわけではなかった。むしろ相違があることのほうが多いくらいだ。
ただし幾つか根幹的な部分で、同意が得られることがある。だから一緒にいて不快でない。

「あれは磨けば輝くな」
ドンが言う。
「広い運動場、新鮮で上等な餌、綺麗な水を与えて、毛並みを丁寧にブラッシングしてやれば、さぞ美しく優雅であろう。もっとも、そこまで用意できる人間は極限られた、一部に過ぎない。だから王族の趣味なのだ」
琥珀色の液体を飲み干し、コン、と音を立ててグラスがテーブルに置かれる。

「そこまでできる器量になれと?」
「できるだろう、当然」
「あんたの指示でやるんじゃない」

ピシャリと言い放ってそこだけはハッキリさせると、ドンは満足そうに笑う。




「やはり気に入っているんだな」
「お前言いたかったのそれか」