「犬の舌はひらひらしている」



天気の良い朗らかな日だった。
義骸に入った東仙は覆面もしていないし、褐色の手も剥き出しだ。

本日の任務:待機。
要は案山子だった。敢えて見えるように立っている。人も通らぬ田舎道で。席次が高くなっても、時たまこんな仕事が回ってくる。しかも無駄に二人投入して。その上ほとんど会話もしていない。暇だ暇だと思ったころ、不意に屈んだ東仙が呟く。

やけに人に慣れた野良犬が、手を舐めていた。




独り言なのかなんなのか。計りかねて藤堂も「はぁ」と曖昧に声を出す。
出してから、しばらく黙って、会話を繋げようと試みた。


「他のと違うのか」
犬が去っていく。
「馬のはもっと厚い」
「牛は、」
「牛はざらざらしている。猫みたいに」

人は?





尋ねようとしてやめた。
この無表情のまま答えられたら、困ると思った。
また会話が途切れた。